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看護師が1年目で転職してどうなったか?【その後談あり】

ヤマモトさん(32歳・看護師・女性)

もう何年も前の話。

私は新卒で転職を経験した。
当時のことは、今思い出しても動悸がするくらい辛い。

でも最近になって色々と思うことがあり、この記事を書くことにした。


私の黒歴史

私は新卒で急性期に配属された。

バリバリ仕事をこなして、どんな事にも対応できるカッコイイ看護師になりたかった。

でも初日からその夢は狂っていった。
昼食中、同期3人で話していた時のこと。

「ぺちゃくちゃうるさい!」
「私が新人の頃は、昼食時に喋るなんてありえなかった!」
「いつまでも学生気分でいるな!」

先輩から注意を受けた。

シーンと静まり返る控室。

私達は周りを気にしてかなりの小声だったし、話題も仕事についてだった。

でも反論できる雰囲気ではない。
それ以降、私達は無言で昼食をとるようになった。

それからも苦痛の連続で、「これはどうやるのですか?」と聞けば「忙しいから後で!」「自分で調べて!」と結局教えてもらえない。
「なぜこれをやるんですか?」と聞けば、「昔からやってること!」「いいからやっておいて!」と煙たがられる。

それが何度も続き、誰も質問できなくなり、新人同士で四苦八苦しながら、何とかやりくりした。

でもどうしても分からないことが出てくる。

問題を見て見ぬふりをするようになり、指示された業務だけをする、消極的な人間になっていた。
これは私だけではなく、同期も同じだった。
目立たずひっそりと、時間が過ぎるのをただ待つだけ。

「新人クン達!元気がないねー!」

見回りにきた理事長が無神経に言い放った。

毎日が辛かった。
何のために働いてるんだろうといつも考えていた。


将来ダメになる人

私は昔、進学塾でアルバイトをしたことがある。

色んな生徒がいたのだけど、「伸びる子」と「伸びない子」には明確な違いがあった。

「これはどうやるのですか?」
「なぜこれをやるんですか?」

こういった質問をズバズバしてくる子は100%伸びる。
それは塾側も良く分かっていて「質問には必ず丁寧に答えるように」ときつく念押しされていた。

人の成長は好奇心から生まれる。
好奇心が疑問となり、人は成長する。

好奇心の芽を摘むのは、成長を止めるのに等しい。
だからこそ生徒の質問をとても大切にしていた。

でも看護の世界はそうじゃない。
「私は見て覚えた」「何も教えてもらえなかった」「自分で調べた」「質問するなんて生意気」「苦労したから成長した」「だからあなたもそうするべき」

こうした「私が苦労したから、あなたも苦労すべき」症候群が看護師には蔓延している。

もちろん日々の忙しさの中で、質問に答えている余裕がないのかもしれない。
でも「人の成長を止めている」という意味で同罪だ。

「質問に答えない」のは「成長させない」と同義語である。

実際、私の看護レベルは低かった。
看護学校時代の友達は、どんどん先に進んでいた。
同じ1年目なのに、色んな事を教えてもらえ、多くの経験をして、明らかに私とは違った。
とても前向きでキラキラした看護師に見えた。

友だちは伸びる子、私は伸びない子。
何でこんなにも差がついてしまったのだろう、と思った。


1年目の退職

私は退職願を出した。

「こんな事くらいで辞めるの?」
「アンタなんてどこいっても通用しないよ!」
「ホント根性ないね!」
「もっと苦労しなきゃ成長しないよ!」


「苦労があるから成長する」日本人はこの言葉が大好きだ。

確かにその通りだと思う。
苦労して試行錯誤することで、色んな経験を積み、知識を蓄えていく。

でも「しなくていい苦労」もあるのではないか?

その1つが人間関係だと思う。

いつもイライラしている先輩、人を見下す先輩、下を育てる気がない先輩、屈折した看護観を押し付けてくる先輩、尊敬できない先輩。
先輩達のようにはなりたくなかった。

「いじめ」「無視」「パワハラ」

どれもしなくていい苦労である。
「いじめを受けたから強くなれた」という人もいるが、それは一部の人間である。
大半の人は萎縮し、消極的になり、行動できなくなる。

同じ苦労をするなら、真っ当な仕事で苦労したい。


私の今

私は30歳になった。
神奈川のそこそこ大きな病院で主任をしている。

新卒で転職して正解だった。
あのままだと、たぶん看護師を辞めていたと思う。
続けていたとしても、普通の看護師には育たなかったと思う。

当時転職したのは、ごく普通の総合病院だった。
でも普通だからこそ「普通の看護が学べた」のだと思う。

異常な病院では、異常なスキルしか身に付かない。
それが避けられて本当にラッキーだった。

普通の看護スキルがあれば、たいていの職場でやっていける。
私は3度転職しているが、技術的に困ることはあまりない。

もちろん今でも勉強はしているが、普通の病院で教えてもらった「当たり前の看護スキル」がとても役立っている。


惨めな末路

「間違った教育」

中学生のころの部活動を思いだす。

私はバレーボール部だった。

1年~2年は全員が球拾いだった。
ボールを使った練習はさせてもらえない。
3年がコートで練習をして、その周りを1,2年がグルリと取り囲み、球拾いをする。

ずっと立ちっぱなし。
疲れて座ろうものなら、すぐに「楽するな!」「みんな耐えてるんだから!」と叱られる。

毎日2時間。
苦痛でしかなった。

3年になりようやくボールを使った練習ができた。

でも試合は一度も勝てなかった。
年間で20試合以上して、すべて負けた。

私たちは圧倒的に弱かった。

それもそのはず。
ようやく練習しだした初心者だから。

相手は3年間みっちり練習してきた上級者ばかり。
圧倒的なまでの差があった。

高校に上がりバレーボールを続けたのは14人中たったの1人。

「下手すぎて惨めだった」
「恥ずかしかった」

その1人は、3年間一度も試合に出られなかったらしい。

周りが全員下手だったときは、恥なんて無かった。
けど普通にできる人達に囲まれたとき、自分の無力さを知る。

看護師も同じ。
レベルの低い職場にいれば、恥なんてない。
でもそこから出たとき時、自分の無知を知り、惨めな思いをする。


同期の末路

私が退職後。
同期の2人は、あの酷い環境で3年以上を耐え抜いた。

でも今は看護師として働いていない。

一人は「もう看護師はしたくない」と、今はヤクルトレディーをしている。
もう一人は転職を10回以上も繰り返し、正確な回数は本人も分からないくらい。求められる仕事がうまくできず長続きしないのだとか。今は失業中。

彼女達の例はたまたまかもしれない。

けど私は「あの病院で働いていたからだ」と思っている。

何も学べず、何も得るものがなく、無駄なことばかりさせられ、精神的に苦しめられ、屈折した看護観を押し付けられる。
まともな看護師に育つわけがない。

そんな環境で何年も働けば、他でやっていけない看護師になるのは目に見えていた。

こんな病院はすぐに辞めたほうがいい。
絶対に働いちゃダメ!


辞められない理由

日本には「下積み」という文化がある。

特にスポーツや専門職、職人の世界ではその傾向が強い。

料理人なら皿洗い。
美容師ならシャンプー。

こんな理不尽な下積みを何年もやらされる。

皿洗いをして料理が上手くなるのか?
シャンプーをして髪を切るのがうまくなるのか?

「5年下積みしてようやく魚を切らせてもらえました」

とあるTV番組でこんな寿司職人がいた。
でもそれをフランスの有名パティシエがディスっていた。

「皿洗いに意味はない」
「誰もやりたがらないから新人にやらせている」
「下積みという口実があるから誰も文句を言わない」
「それを当たり前だと思っている日本の料理人は遅れている」
「フランスでは新人でも料理を作っている」
「1年目からメキメキと腕を上げていく」
「皿洗いは機械がやればいい」
「アナタは5年遅れている」

その通りだと思った。

しかし日本では下積みが当たり前。
どんな理不尽にも耐える努力が美しい。

こうして貴重な時間を捨てることになる。


ズレた看護師

物事は習い始めが一番伸びる。
スポーツ、勉強、仕事。

看護師であれば1年~3年目でグンと伸びる。

3年の間に看護のイロハを学ぶ。
この時期に学んだことは、将来の働き方にずーーーーーーーーーっと影響を与える。

学んだイロハがズレていたら、一生ズレ続ける。
ズレた知識が体に染み込み、それを常識だと思ってしまう。
それで苦しむ人は多い。

アンタはそれで本当にいいのか?

常識ズレした看護師はよく見かける。
正直、イタくて見てられない。

でもアンタには、そんな人になってほしくない。

ふー…。

というのを幼馴染に熱く語ってしまい、泣かせてしまった。

でも嫌われてもかまわないと思った。

今の病院だけは辞めてほしかったから。

人生に悪影響しかないような職場。
今辞めないと、将来絶対に後悔する。


新卒で転職を考えるあなたへ

・仕事を教えてもらえない
・先輩達がきつすぎる
・看護方針に疑問がある

そういったときは転職も一つの選択肢。
私的には、若い貴重な時間をムダにしないためにも、もっと自分に合った職場に移った方がいいと思う。

自分に合った職場は誰にでも必ずある。

それを見つけるには行動しかない。
現状維持では、何も変わらず、それどころかどんどん悪くなってく。
頑張って耐えて潰れてしまった同期2人のように。

転職に不安があるのなら、プロに相談してみたらいい。
今どきの転職サイトは担当者が付いてくれ、色々とアドバイスしてもらえる。
世の中には色んな病院のも分かってくる。

別に今の病院にこだわる必要なんてない。
そう思えるだけでも気持ちは楽になるから。