日本ナース友和会、西日本支部事務局長の立川です。
「もう夜勤無理です…」
先日、会員の方から相談あった。
かなり切迫している様子。
看護師にとって夜勤はアキレス腱だ。
長く働くには、夜勤の辛さを解消するのが、必要不可欠と言ってもいいほど重要な問題である。
そこで今回は「夜勤を楽にできた方法」を紹介する。
よくある精神論ではなく、エビデンス中心の理論が中心となっている。
なぜ夜勤は辛いのか?
夜勤が辛い原因は3つに分類される。1.身体的に辛い
体内時計の狂い
昼に寝ても回復しない
睡眠環境が悪い
2.精神的に辛い
責任が重い
夜勤メンバーが嫌
息つく暇がない
3.生活リズムが辛い(シフト)
拘束時間が長すぎて辛い
不規則すぎて辛い
これらの原因を知り、1つ1つ潰していく。
身体的な辛さを軽くするには?
夜勤の身体的な辛さ。これは「体内時計の狂い」が大きな要因。
体内時計は、24時間周期の生理現象。
でもそのリズムが狂うと「睡眠、注意力、ホルモン分泌、体温、免疫、消化機能」などの生命維持に影響が出る。
これらの症状が慢性疲労、集中力・判断力の低下、吐き気、頭痛などに繋がっている。
「夜勤は慣れる」と言う人もいる。
だがこれは間違いだ。
体内時計は日光でリセットされるため慣れることはない。
海外旅行から帰ってきた時差ボケのようなダルさだけが残る。
ドイツの生理学者ユルゲン・アショフの研究によれば「光を全て遮断した環境であれば、体内時計がリセットされず夜型の体にもなれる」そうだ。
普通に生活するのは難しいだろう…。
では体内時計の狂いを解消するにはどうするか?
リズムの狂いを最小限に抑えるのが有効だと言える。
具体的には、人間の睡眠サイクルである「22時~6時」を意識すること。
キーとなるのは仮眠だ。
例えば2交代の場合を考えてみる。
夜勤前(14:00~16:00 2時間)・仮眠(2:00~4:00 2時間)・夜勤後(10:00~12:00 2時間)で寝る。
いつもの睡眠時間(22:00~6:00)に長さも時間帯もなるべく近づける。
これによって体内時計の狂いを最小限に抑えるのだ。
逆に。
夜勤後「午前中は遊び、昼や夕方にかけて寝る」のは体内時計的に最悪。
その日の夜に寝つきが悪くなり、狂いが大きくなる。
夜勤後は午前中の早めの時間に眠るようにしてほしい。
また夜勤の体の辛さは、昼に寝ても回復しない。
夜勤後に寝るという人も多いと思いが、この睡眠は非効率。
夜勤後の睡眠は、夜間の睡眠に比べ、たった3割ほどの疲労軽減にしかならない。
これには体温が関係している。
夜は体温が自然と下がり眠る環境が整うため、深い眠りになる。
だが活動時間中の睡眠は体温が高いため、眠りが浅くなる(脳が起きているレム睡眠)
ではどうしたら効率の良い睡眠ができるのか?
それにはやはり夜勤中の仮眠しかない。
精神的な辛さを軽くするには?
夜勤の精神的な辛さ。これは「責任の重さ」が大きな要因。
夜勤は必然的にスタッフが少なくなる。
緊急時でも、助けが来ない可能性がある。
これは思いのほか、プレッシャーとなりのしかかる。
改善策としては、周りとの協力が重要だ。
少ないスタッフの中で、協力してもらえる関係を築いておくとよい。
また夜勤メンバー間の人間関係も影響は大きい。
夜勤はスタッフが少ないゆえに関係が濃密になる。
しかも長時間。
合わないメンバーと一緒になれば苦痛も大きくなりがち。
どうしたらいいのか?
嫌いなメンバーを作らない、嫌いなメンバーを好きになってみるという方法もある。
しかし性格が合う合わないは生理的な問題でもあり難しい。
それよりも嫌いなメンバーと極力一緒の夜勤に入らないようにする方が現実的だ。
例えば、良くしてくれる先輩に「不安なので先輩と一緒に夜勤がやりたい」と言っておけばいい。
シフト担当者に「夜勤の指導をする」と頼んでもらい、一緒に入るようにする。
これで嫌いなメンバーと一緒になる確率は減る。
仮に一緒になったとしても、気の合う先輩を頼れば、嫌いなメンバーと接する機会も減る。
生活リズムを楽にするには?
生活リズムはシフト体制によって大きく変わる。2交代、3交代、12時間変則など。
・2交代
拘束時間が長い
睡魔が辛い
オフの時間が長い
連休が作りやすい
出勤回数が少ない
生活リズムが比較的作りやすい
急な休みで代役が見つかりづらい
仮眠時間が長い
仕事に慣れてない時期(新人)の16時間拘束は特に辛い
・3交代
シフトが複雑に自然に近づけやすいなる
生活リズムが乱れやすい。
夜勤頻度が多くなる。
日勤→深夜が大変。
準夜→深夜など連続勤務もある。
深夜の帰宅が怖い
正循環=体にやさしい(日勤→準夜→休み→深夜
逆循環=連休が取れる
・変則2交代(早番、遅番、夜勤12時間)
採用している病院が少ない
時間の長さが丁度良い。
睡眠サイクルが自然に近づける。
看護協会が推奨している
移行する病院がチラホラ
遅番は独身者で固定されがち。
看護協会で推奨している勤務体制。
自分がどのシフトに合うかは、人それぞれ。
長時間の夜勤は嫌だという人もいれば、出勤回数が少ない方がいいという人もいる。
生活リズムがシフト体制に合わないようであれば、転職も検討したい。
まとめ
人間の体は昼間に活動するよう作られている。昼に働くのが自然なのである。
夜勤とは不自然との闘いでもある。
ゆえに不自然を自然に近づけられた者が勝者となる。